2011年02月04日
ほとんど睡眠薬 ローマ人の24時間
古代ローマ人の24時間---よみがえる帝都ローマの民衆生活(アルベルト・アンジェラ・河出書房新社)★★★
古代ローマ人がどのような生活をしていたのか、その一日を追っている。今に通じる習慣や文化がある一?方、キリスト教以前の倫理観など、驚きも多い。ポンペイの遺跡を見に行ったことがあるが、鉛菅をつかった今と変わらない水道と蛇口があるのに非常に驚いた覚えがある。ローマ人が大好きだった浴場も、床暖房やスチームサウナがあったことは聞いていたが、断熱のため窓がペアガラスだったとは知らなかった。驚愕。
個人的にもローマは大好きで、内容も興味深いのだが、どういうわけかベットで読み出すとものの数分で猛烈な睡魔に襲われる。他の本ではそんなことはないので、この本だけの特徴。内容に依るのか、紙の薬品のせいなのか定かではないが、その効果は抜群。おかげで、読み終わるのに二ヶ月近くかかってしまった。寝付けないひとにお薦め、か・・・・・? 投稿者 Hiroto Takaguchi : 08:04
2011年01月31日
新書二冊
上海 - 多国籍都市の百年 (榎本 泰子 中公新書) ★★★★
上海万博に行くというので、由木先生がくれた一冊。これを読んでから行けば、バンドの夜もまた違った光景に見えただろうに。入門書としては良くできている。ブータンに魅せられて (今枝 由郎 岩波新書) ★★★★★
僕の中で行きたい国No.1の国。国民幸福指数を打ち出し、GDPとは異なった路線で発展を目指す国。ブータンに1980年代に10年滞在した筆者の随筆。おそらく、この路線が取れるのはブータン以外にはなかろうと思うと、奇跡のような社会実験を行っている国である。
筆者は宗教学者なのだが、宗教学者の不信心とはよくいったもので、どこか冷めた視線が、単なる信奉者とは違う趣を醸し出している。あ〜、ブータン行きたい。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 18:59
2011年01月10日
宇宙は何でできているのか
宇宙は何でできているのか [幻冬舎,村山 斉]どこかで読んだ書評での評判がよく読んで見た。
本当はこんなに簡単じゃないんだろうけど、非常に分かり易くエキサイティング。
物理学の発展に日本人が果たした役割の大きさに驚嘆
投稿者 Hiroto Takaguchi : 16:52
2010年10月18日
借りぐらしのアリエッティ
友人の結婚式の帰り。時間が少し空いたので日比谷で映画を見る。借りぐらしのアリエッティ。結構大きな箱なのだが客の入りは10人ほど。少し寂しい。監督は宮崎駿が後継者と見込んでいる米林宏昌。脚本は宮崎駿。
舞台は多摩のどこか。身近なお話。それだけにファンタジーなのかリアルなのか、その曖昧さゆえか話になかなか入っていけない。他にも映像表現のブレなどちぐはぐな所が目立つ。盛り上がりとしては、お手伝いさんに見つかる所ぐらいなのだが、それもするっと通り過ぎエンド。話が薄っぺら過ぎる。ポニョは純粋な子供向けファンタジーとしてなんとか納得したのだが、このところジブリ作品が面白くない。監督を育てようと若手を起用しているのは分かる。それにしても脚本がなっていない。ゲドもそうだったがやたらと直接的なお説教が多くいきなり興ざめ。ゲドが言うぶんにはまだましだが、ショウがしゃべってはいかんともしがたい。
宮崎駿も69歳。残念だが往年の力はもう無いようだ。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 08:37
2010年01月22日
エリック・ロメール
大好きな映画監督エリック・ロメール氏がお亡くなりなった。御年89才。あのすがすがしさとエロさが入り交じった映画がもう見られないかと思うと悲しい。
最初に見たのは「夏物語」という映画だった。男前なのだが、兎に角話の長い(実はこれがロメール映画の特徴だったのだが)のが面白く(これを面白いと思えるかがロメールを好きになれるかの境目)、実は常連だったアマンダ・ラングレがかわいかった。
しかし、ロメールが大学の先生やりながらの監督だったとは意外。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:35
2009年02月07日
チェ 39歳別れの手紙
チェ 39歳別れの手紙(監督:スティーブン・ソダーバーグ)★★
帰り道、最後の回の5分前に歌舞伎町の映画館に駆け込む。座席には20人ほどの客がいる。パート1と同じく中高年が多い。歌舞伎町という場所が高齢化しているのかも知れない。あの後、「チェ・ゲバラ伝(三好徹)」を購入。まだ読めていない。
ボリビアで共産主義革命を起こそうとゲリラを組織し、戦い、死ぬまでを描いている。ボリビアのゲリラがどのような規模なのか映画からは伝わってこない。民衆の支持を得られず、次第に孤立し追い詰められていく様子が描かれている。逆にカストロの存在を感じる。
登場人物も少なく、戦闘シーンも地味、風景もジャングルか乾燥した荒野で、焦点は否応なくチェ本人に集中する。パート1では強さを引き立てた喘息もここでは暗い未来を暗示する。教育者としての彼の元からも、人が去っていく。
果たしてパート2を作る意味があったのか。エンターテイメントとしては駄作だと思う。しかし歴史としては見なければならない。そうでなければ完結しない。パート2はDVDで良い。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:10
2009年01月26日
慰めの報酬
チェ 28歳の革命(監督:スティーブン・ソダーバーグ)★★★★
今の時代に何故「チェ」なのか? そんなエネルギーがふつふつとマグマのように若者に溜まっているのか? そんな時代性を考えながら、朝一番の映画館に入る。封切り間もないというのにお客はまばら。しかも観客の年齢層が高く、予想を裏切られる。70%位が50代以上という印象。時間帯のせいなのかよく分からない。
チェといえば、反体制のイコンというイメージが強く、知ってはいるのだけれど憧れとまではいかず、どこか非現実的な存在。それが僕にとってのチェだったのだが、少しイメージが変わったのが少し前に公開された「モーターサイクルダイヤリー」。南米を旅する若き医学生に小さくない共感を覚え、旅に対する憧憬を強くしたものだ。さて、映画であるが、時代を行き来する手法に好き嫌いはあるだろうが、ドキュメントタッチの撮り方としては悪く無い。ベルトロがどう見ても28歳には見えない、貫禄がありすぎるように思う。実際の国連での演説の写真は、才気みなぎる青年という感じだが、ベルトロはやや熟達した政治家という風。まあ仕方ない。007 慰めの報酬(監督:マークフォスター)★★★
プロットが複雑で途中までちんぷんかんぷん。ああ、これは続編なんだ・・・・と気がつき、話が少しつながる。カジノ・ロワイヤルを見て予習した方が良い
もはやボンド映画ではなく、良くできたスパイ・アクション。よく考えればボンドはヘマしまくりなのだが、本人には自覚がないのか厚顔なのかそれを感じさせない。もう少し時間を長くしても、じっくりとしたプロットの方が良かった。これならボーンシリーズの方が良い。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:17
2009年01月19日
ローマ無き後の地中海世界
先週、月曜日辺りに風邪を引いたのだろうか、週の中頃から咳と微熱で金曜日についにダウン。土日を家で寝て過ごす。食欲も無く2日で三膳の茶漬けを食すのみ。今朝体重を計ると寝込む前から3kgも減っている。
寝ている間に、塩野七生の「ローマ無き後の地中海世界」上巻を読む。彼女の本は、魅力的な人物が居れば面白くなり、居なければ至極つまらない。この本も読み物としては「至極つまらない」部類だろうか。あっという間に北アフリカとイベリア半島を制服したイスラム勢力とイタリアと中心とするヨーロッパ社会との戦いを描いているのだが、これがローマ人の子孫かと思えるほど稚拙な争いが続く。
面白そうな人物としては、シチリア王フリードリッヒ二世が登場するのだが、通史のせいか扱いも淡泊。ベネチアについても詳細は「海の都の物語」を見よとなっているように、本人としても既に個別にはやり終えていると思っているのかも知れない。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:18
2008年10月13日
ハンコック
ハンコック(監督:ピーター・バーグ)★★★
少し時間が空いたので久しぶりに映画館で映画を見る。時間が合ったのがこの映画。スーパーヒーローが孤独感からアル中で、廻りに迷惑をかけまくりと、従来のヒーロー物とは違った視点で注目はしていたのだが、出だしのCGがショボすぎる。ウィル・スミスに シャーリーズ・セロンと出演料が嵩んでいるのは分かるが、一応特撮物なんだし・・・・・。
後半、ややストーリーらしき流れが出てきて、それなりに楽しめるが、まあB級映画ですね。しかし、シャーリーズ・セロンは相変わらず美しい。サイダーハウスルールがすばらしく、ずっとファンなのだが、時々訳の分からん「イーオン・フラックス」とかにでて評価を落とすのはなぜなんだろう。この映画もどちらかというと評価を落とす範疇に入るように思う。
さて、ハンコックといえば、建築を学んでいる者なら一度は聞いたことがあるはず。シカゴにある超高層「ジョン・ハンコック・センター」は、高層ビルの高さ比べでは必ず出てくる名物建築。角のようなアンテナが特徴的で、シカゴの観光名所でもある。ジョン・ハンコックはアメリカ独立の英雄の名でもあり、ビルのオーナーの保険会社の名称でもある。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 12:01
2008年08月24日
ハリー・ポッターと死の秘宝
ハリー・ポッターと死の秘宝(J. K. ローリング・静山社)★★★★
ハリー・ポッターの最終巻。いや〜しかしよく登場人物が死ぬこと。
前巻の記憶が曖昧なせいか、どうも今ひとつ感情移入できない。全体にどうも急ぎ足な印象。翻訳も言い回しが不自然なところがあってすこし引っかかる。しかし、おもしろい。結局枕元において数日で読んでしまった。
賢者の石がでたのが1999年だからかれこれ9年たつ。全て初版で読んでいる。「ローマ人の物語」の最終巻(初巻から14年かかった)を読んだ時も感じたが、でるたびでるたび、リアルタイムで読んでいると、その時間を振り返ってしまって年を取ったことを実感する。子供であればまさに自分の成長と重ね合わせ、全く異なった感想を持つに違いない。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 10:50
2007年10月30日
エコハウス私論など
エコハウス私論(小林光・ソトコト新書)★★★★★
農ある暮らしで地域再生 アグリ・ルネッサンス(山本雅之・学芸出版)★★★
デンマークの環境に優しい街づくり(福田成美・新評論)★★★
100年住宅への選択(松藤泰典・技報堂)★★★★★
日本人としてこれだけは知っておきたいこと(中西輝政・PHP新書)★★★★
学校では習わない江戸時代(山本博文・新潮文庫)★★★
日本の有名一族(小谷野敦・幻冬舎新書)★★★
ひとすじの蛍火-吉田松陰人とことば(関 厚夫・文春新書)★★★★ 投稿者 Hiroto Takaguchi : 18:20
2007年08月19日
オーシャンズ13
久しぶりに映画を見る。オーシャンズ13(監督:スティーブン・ソダーバーグ)★★
12よりはましとか、散々なレビューが多い13。そうはいってもダーバーグはそれなりにきちっとまとめ手くれているはず思って見たのですが、結果かなり退屈。シナリオも穴が多いし、個人的には12のほうがまし。アル・パチーノがあれほどオーラを発していない映画を初めて見る。
ついでにちょっと前に見た映画 ゾディアック(監督:デビッド・フィンチャー)★★★★
未解決の連続殺人事件を題材に、事件にはまっていく刑事と漫画家を描く。フィンチャーらしい映像がおどろおどろしい。「ドニー・ダーコ」では高校生役だったジェイク・ギレンホールも、「ブロークバックマウンテン」を経てすっかりおっさんになってしまった。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 16:53
2007年06月28日
【文明の衝突】冷戦後の枠組みを解いた名著?
文明の衝突(サミュエル・P. ハンチントン・集英社)★★★★
よく,単純な事を繰り返し繰り返し書いて,あれだけ分厚くできるものだ。率直な感想。
この本が出たのは1998年だから,も10年近く前という事になる。当時から話題にはなったが縁がなかった。数年前に気になって買っては見たが,その分厚さに圧倒されてそのまま書棚の肥やしにしてしまった。それが先日の引越で,たまたま書棚の目に付くところに移り,就寝前の一冊としてこの度ようやく読み終わった。
氏の主張は,冷戦終結後の対立の構図は,イデオロギーではなく宗教に基づく文明グループ間で起こるというもの。2001年の9.11以後,その主張はほぼ受け入れられ,あらゆる論調の基底をなしているように思える。ヨーロッパがカトリック系と正教会系の2つの文明に分かれているという視点は,コソボがなんなのかという,日本人には極めて分かり難い事象を解いてくれる。当時,日本が一国で一文明を形成する唯一の文明と説明されている事が,日本人の自尊心を擽ったが,実際扱われているページ数は極めて少ない。将来予測としては,日米同盟を徐々に解消し,中国に傅くとされているが果たしてどうであろうか。「複雑系」とは何か(講談社・吉永良正)★★★
新書の入門書。数式もなく概念としての複雑系を分かり易く説明している。建築環境の分野も複雑系の最たるものと思えるが,複雑系的な研究は極めて少ない。実践的な事象を説明する道具としては,使えそうな気がするが。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:14
2007年05月28日
The Holiday
ホリデイ(監督:ナンシー・メイヤーズ)★★★
やや年をとってきたキャメロン・ディアスが、心に傷ある泣けない女性を好演している。お互いの家を交換してバケーションを楽しむというのが流行っている(本まかいな)という設定の下、ロンドンとLAで新たな出会いが・・・・。という設定が今風という以外は古典的なラブコメディー。あまりに2枚目過ぎてこれまで好感が持てなかったジュード・ロウがなかなか良い味を出している。一方のケイト・ウィンスレットとジャック・ブラックはどうも苦手。
そういえば、エリック・ロメールの「夏物語」も夏のバカンスをバカンスに出かけた知り合いの家を借りて・・・・という設定だった。物が少ないからか、それようの保険が有るのか、日本では同様の仕組みを聞いた事がない。どういう背景があるのか調べてみようと思う。バベル(監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)★★★★
評判通りなかなか良い。菊地凛子は孤独な聾の女子高生を正に体当たりでこなしている。日本の扱い方も、許せる範囲(実際ああなのかも知れない)。ブラピも難しい役をよくこなしているが、殆ど台詞のないケイト・ブランシェットがやはり素晴らしい。しかし役所広司が写っているハンティングの写真がいかにも合成で安っぽい。なぜあそこで金をケチる。かなり気になる。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:22
2007年05月23日
大阪人はなぜ振り込め詐欺に引っかからないのか
大阪人はなぜ振り込め詐欺に引っかからないのか(扶桑社・竹山隆範)★★
大阪人としてつい買ってしまったが、当事者としてはごく当たり前のことしか載っていない。しかし、読みながらやはり自分が大阪人であることを再認識してしまった。大阪人は、振り込め詐欺の電話がかかってくるのを心待ちにしている。笑いを取るネタとして手ぐすね引いて待っているのである。そんな所へは確かに電話をかけたくない。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 12:14
2007年05月06日
藤森建築と路上観察
「藤森建築と路上観察」展を見に行く。会場は東京オペラシティアートギャラリー(7/1まで)。オペラシティは初台だが、大江戸線で行けるものと思い込み、中井で乗り換えることに。中井には6,7年住んだ事がある。せっかくなので上京して最初に住んだアパートを廻って大江戸線中井駅に。路線図を見ると、初台に最も近そうな西新宿五丁目まで行き、そこから歩く事にする。地図を見ると方南通りから甲州街道までを南下する事になる。
ちゃんと調べれば良かったのだが、開場は11時から。小一時間ほど時間がある。丁度書店があるので、読みたかった本を購入。災い転じてである。喫茶店で本を読んでいると、気付くと11時を廻っている。塞翁が馬だ。会場はチケット売り場には5人ほど並んでおり、なかなか盛況。構成はベネチアピエンナーレ建築展の帰国展という事で、これまでの設計活動の大凡が分かるような展示になっている。ペネチアは前回が「萌え」で今回が「藤森」という事で、「日本はどうなっているんだ〜」と大いに日本への興味を高めたことと思う。個人的には「藤森」に共感がある。会場には、写真の他に、漆喰や屋根仕上げなどの素材も展示されており、焼き杉の香りが漂っている。奥の方には芝の塔が展示してあり、その辺りは当然草くさ� ��。これこそ藤森建築の展覧会である。
改めて、藤森建築を見ると、ボキャブラリー的には日本の伝統建築に殆どある物である事に気づく。本人も書いているように、芝棟からは影響を受けたと認めている。漆喰にしても、銅板にしても、土壁にしても、技術的には新らしくないが、それが新しいように見えてしまうのが藤森建築の魅力なのだろう(土壁に色々混ぜて見たが、結局ワラが一番いい。と言われてもね・・・・・。でもそれが新鮮だったりする)。しかし、伝統建築のボキャブラリーの中で、真壁だけは採用していないようだ。あれで真壁にしてしまうと、伝統的な茶室と何が違うのか? となってしまうからだろう。
以前から思っていたのだが、藤森建築と宮崎駿の造形デザインには共通するものを感じる。ナウシカやラピュタの造形と藤森建築がどこか似ているのだ。地面から生えたような・・・・。そのうちちゃんと検証してみたい。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 14:27
2007年05月01日
武士の家計簿
電車通勤の良いところは、本を読む時間が増える事だ。新書なら数日で読めてしまう。
武士の家計簿(磯田道史・新潮社)★★★★★
数年前に話題になった武士の家計簿。このところ江戸時代を見直す動きが活発化しているが、そのきっかけとなった本の一つ。金沢藩の御算用者が付けた家計簿を基に、幕末の武士の暮らしを描く。時代や職業としては、少し前に映画化された「たそがれ清兵衛」の主人公が近い。
「江戸の女」や「たそがれ清兵衛」、そしてこの本など、江戸の本を読んでいつも感じるのはその教育力の高さだ。生きていくためにはまさに教育が必要という事で、子弟の教育に父母だけでなく、祖父や後見人も登場し、徹底して生きる作法と技を身につけさせようとするのは、現代も同じかもしれないが、中身が違う。こういう教育を受けた人々が明治になって、世界に互して活躍するのだから、今よりレベルが低かったと思いこむのは、全くの心得違いというものだろう。
算術者は才能が全てなので、身分を超えて活躍する余地があり、そこから身分制が壊れていったとの記述があり、数学が必要な砲術者も同じと指摘されている。そういえば、大隈重信も砲術者の出身だった。「人口減少」で日本は繁栄する―22世紀へつなぐ国家の道(日下公人・祥伝社)★★★★★
人口減少の何がいけないのか今一つ分からない。要は高齢者を支える労働力が少なくなって大変という事なのだが、少子化を招いたのは彼ら高齢者の責任であり、その責任を取って働き続ければ良いだけではないかと単純に思うのである。子供の養育というのは金もかかるし、労力も必要だ。それらからある程度開放されるのだから、女性も働くし、それほど悪い事ではないのではと思う。何より、この小さな島国に、1億2000万人もいることの方が異常だと、皆思っていたはずだ。東京の地価も、バブル期に高すぎると大騒ぎし、いざ下がり始めるとデフレだとまた大騒ぎする。何か本質を見失っているように思う。
そんな最中手に取った本。少子化の原因についての記述が面白い。
よく考えてみると、日本の未来はこうなります。 (日下公人・ワック)★★★★
先の本が面白かったので、日下公人の本をいくつかまとめ買い。時期が近いせいか、内容は「「人口減少」で・・・」とほぼ同じ。
ラブソングができるまで(監督:マーク・ローレンス)★★
会議の帰りに寄り道。東京はあちこちに映画館があっていい。
しかし映画は最悪(に近い)。ドリュー・バリモアは大好きだし、 ヒュー・グラントのお茶目な感じも好きで、この類の映画は殆ど見ている。ジュリア・ロバーツとヒュー・グラントの「ノッティングヒルの恋人」は、現代のおとぎ話として最高の出来だった。しかし、魔法は解けてしまった。
ストーリーは、「About a Boy」のBoyを植木係に変えただけ。人生を投げている男がふとした出会いをきっかけに、恋と人生を取り戻すというおなじみのストーリー。伝統芸能的ベタな話なのだが、それでもちゃんとまとめてくれればそれなりに楽しいはずなのだが、まず脚本が目茶苦茶。やたらとテンションの高いドリュー・バリモアが作詞に取りかかるまでは殆ど支離滅裂でリアリティーがまるでない。ヒュー・グラントは、いつもの役回りをそれなりにこなしているのだが、顔のしわが目立ち過ぎ、人生を投げた中年としてはあまりに痛々しい。そろそろ新しい役回りを考えないと、それこそ元スターになりかねない。
それでも最後は何とかハッピーエンドに辿り付き、それなりに少しハッピーな気持ちになれるところは、伝統芸の底力と言うべきか。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 08:30
2007年03月16日
ローマ人の物語
ローマ人の物語〈15〉ローマ世界の終焉 (新潮社・塩野七生)★★★★
15年に及ぶシリーズ最終刊。第一巻を読み始めて15年も経つのかと思うと、年を取った実感がわいてきます。ベタな感想ですがローマの滅亡と現在の日本の状況が驚くほどにていることに驚かされます。特に人の数では遥かに劣る蛮族に支配されてしまったのが、なんと云ってもローマ人の志気の低下、民族としての質の低下、国を自分で守るという意識の低下にあったことは、現在の教育の状況を考えると恐ろしくなります。特にキリスト教の登場が、ローマという国体の弱体化に決定的な役割を果たしたように思えるのですが、異民族同志の戦争が略奪と皆殺しが当たり前の時代に、蛮族にも広がったキリスト教が同じ宗派同志ということで連帯を始め、辛うじてローマ文明がその残渣を残す役割を演じたのは歴史の皮肉としか言いよう がありません。この時代から既にカトリック対異端の争いが始まっており、大らかな多神教国家であったローマの歴史を思うと、キリスト教の罪の大きさを感じずにはいられないのですが、いずれにしても何かの必然であったということでしょう。宗教VS.国家(講談社・工藤庸子)★★★★
フランスという国は、政教分離の徹底した国で、最近ではムスリムのスカーフが学校の教室で禁止されたことからも分かるように、教育現場における政教分離は特に徹底しているという印象がある。我々から見ると、「それくらい・・・」と言いたくなるようなことなのだが。
巻頭、日本の人権のポスターにマザー・テレサが出ていることからこの本は始まる。日本人にとって、マザーテレサは極貧の人々の基本的人権を支えた聖女ということになるのだが、フランス人から見ると、キリスト教こそが基本的人権を長年にわたって阻害してきた張本人であり、フランス革命を通じフランスが戦ってきたのは、まさにキリスト教から基本的人権と教育現場を取り返す作業であったことが述べられている。彼らにしてみれば、100年以上に及ぶ闘争の末、十字架さえも教育現場から追放したという記憶が残っており、ムスリムの象徴であるスカーフももってのほかと言うわけである。
例によって、歴史の無知を思い知らされる一冊。
ソウルズ(角川書店・田口ランディ)★★★
出張中、K先生から譲ってもらった文庫本。心が何となく温かくなるベタな一冊。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:37
2007年02月06日
日本人の心と建築の歴史
日本人の心と建築の歴史(上田篤・鹿島出版会)★★★★
都市と日本人―「カミサマ」を旅する―(上田篤・岩波書店)★★★★
昨年末読んだ上田篤先生の書籍をまとめ読みする。最近のものなので、内容的には非常に似通っており、結果的には「日本人の心と建築の歴史」を読めば充分。日本の歴史をヒメ・ヒコ制の歴史として解き明かしながら、日本人と住まいについて述べている。特に、日本人の行動原理をマナイズムとしているところは、目からウロコだった。なぜ、日本人は新築を好むのか。使い捨ての文化はどこから来たのか。この本は重要な視点を与えてくれます。世界の日本人ジョーク集(早坂 隆・中央公論新社)★★★
少し前にテレビなどでも取り上げられていたベストセラー。出張の電車の中で読む。
007 カジノ・ロワイヤル(監督:マーティン・キャンベル)★★★★★
007というと、面白いのだが、ロマンスだとかハイテクの小道具だとかを見ていると、ちょっと恥ずかしくなるようなところがあるのだが、この007には全くそういうところがない。もはや別のスパイ映画シリーズといって良いだろう。小道具を抑えめにして、ハードな体を張ったアクションを中心に据えるのは、社会情勢を受けての最近の流れかもしれない。そう考えるとやや悲しくなるが、基本的には非常に面白い映画に仕上がっている。
スーパーマン リターンズ(監督:ブライアン・シンガー)★★★★
DVDで見る。X-Menシリーズのブライアン・シンガーが靴隆篤弔虜造鬚覆欧Δ辰銅茲蠢箸鵑精酩福あまり期待はしていなかったのだ、意外や意外、これがなかなか楽しい。レックス・ルーサー役のケヴィン・スペイシーも良い味を出している。そういえば、第一作はジーン・ハックマンがやっていたが、キャラは殆ど同じで違和感がない。やはり名優ということだろうか。
投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:04
2007年01月09日
ヘンダーソン夫人の贈り物
ヘンダーソン夫人の贈り物(監督:スティーヴン・フリアーズ)★★★
福岡ではミニシアター系のKBCシネマにかかっている。ジュディ・デンチが良い味を出している。話は思ったよりあっさりしている。ケリー・ライリーが磁器の人形の様に美しい。 投稿者 Hiroto Takaguchi : 09:29