2012年4月19日木曜日

多発性硬化症の病因・診断・治療に関する考察−ステロイド依存性多発性硬化症とは何か?−


田中 正美**、岡本 (佐々木) 智子**1)、小森美華**2)、 田中恵子***、齋田孝彦**3)

(オリジナル版)

神経内科, 2010;72:646.


国立病院機構宇多野病院MSセンター
〒616-8255 京都市右京区鳴滝音戸山町8
Tel: 075(461)5121
Fax 075(464)0027
e-mail: tanak

What is steroid dependent multiple sclerosis?

**Masami TANAKA, M.D., Tomoko OKAMOTO (SASAKI), M.D. & Mika KOMORI, M.D.
(〒616-8255 京都市右京区鳴滝音戸山町8);
MS Center, Utano National Hospital, 8 Ondoyama, Narutaki, Kyoto 616-8255, Japan..,

***Keiko TANAKA, M.D.:
金沢医科大学脳脊髄神経治療学(神経内科学)
(〒920-0293 石川県河北群内灘町大学1-1);
Department of Neurology, Kanazawa Medical University Uchinada, Ishikawa, 920-0293, Japan.

1) 現:国立精神神経センター病院神経内科
2) 現:京都大学医学部付属病院神経内科
3) 現:民医連中央病院


ここで、iは馬に捻挫の種類を見つけることができます

2010年3月2日  
今日、古典型多発性硬化症(Multiple sclerosis: MS)と視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica: NMO)とは、後者での抗アクアポリン4(AQP4)抗体の発見と動物モデル作製により、それぞれの典型例は明らかに病態の異なる疾患であり、再発予防のための治療法も異なる、と考えられるようになってきました。視神経と脊髄はMSでも好発傷害部位であり、3椎体以上の連続する脊髄中央部の病変(Centrally located long spinal cord lesion: LCL)や抗AQP4抗体が陰性の場合、鑑別が困難なことが現在でも日常診療上、問題となっています。以前、わが国では両者を一緒にして"MS"と呼んでおり、現在でも行政上の取り扱いも区別していません。


背中の負傷はすべてのコストで回避する必要があります。

古くから"MS"(今日のNMOを含む)患者さんの中に、ステロイドを長期内服していると再発を予防できるけれども、連日プレドニゾロン換算で20 mgあるいは15 mg以下に減量すると容易に再発する患者さんがいらっしゃることが解っていました。当院でも、2006年の第24回日本神経治療学会総会でステロイド依存性を示した再発寛解型"MS"患者9例を佐々木が報告しましたが、その後、当時の血清を用いて抗AQP4抗体を測 定1)しましたので、その結果を合わせてご紹介します。  


RBD 、食欲不振

9例中8例までが女性で、発症年齢は8から52歳、平均値22.2歳、中央値16歳であり、特筆すべきは9例中6例が13から18歳発症例でした。以前、抗AQP4抗体を検索した、連続128例のMS/NMO例中45例でLCLが陽性でしたが、この患者群では2から62歳、平均値35.2歳でしたので2)、家族からの要求が強いなどの影響もあるかもしれませんが、特異です。このなかには、重症筋無力症の診断のもと、胸腺摘出術施行半年後に発症した、15歳発症の女性例がいます。すでに、当施設からは胸腺摘出術後に発症する"MS"合併例はNMOであることを報告していますが、既報例3)とは異なる患者さんです。  

症状発現部位は視神経と脊髄(OS)が3例、さらに脳幹も障害されたOBS例が3例、大脳症状も呈したOCBS例が3例でした。ここで認められた脳幹症状は、難治性吃逆2例、小脳失調2例、眼振1例、複視1例で、大脳症状は痙攣2例(うち1例では痙攣は難治性で、頻回に発作を繰り返し、重積状態を呈したこともあります)、顔面を含む片麻痺1例でした。  


脊髄MRIでLCLが認められたのは9例中男性例以外の8例で、検索できた抗AQP4抗体は6例中4例で陽性でした。LCLが陰性の男性例では検索できなかったため、NMOであるとは言えませんでしたが、他の8例はNMOと考えられました。最近、IFNβ治療にステロイドパルスを組み合わせる複数の治療法が欧米で試みられていますが、MSでは通常量のステロイド単独投与は再発予防に有効ではないとされています4)。ステロイド依存性を示した"MS"患者のほとんどがNMOであったことは、結果としてNMOでのステロイドの有効性を経験的に証明したことになると思われます。  

すでに周知のように、NMOの再発予防にステロイド内服は有効で5)、ステロイド減量のためにアザチオプリンなどの免疫抑制剤の併用も行われています。一般的ではありませんが、ステロイドでも充分に再発を抑制できない場合は、ミトキサントロン6)やリタキシマブ7)の投与を当施設では行っています。  



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