2012年6月4日月曜日

井蛙内科開業医/診療録(4):感染症


  • 日本初の不活性化ポリオワクチン

  • 水痘ワクチン,追加接種の推奨時期を早める

  • 単純性虫垂炎への抗菌薬

  • 抗菌薬の選択

  • インフルエンザの出席停止期間

  • 経口弱毒生ロタウイルスワクチン  ロタテック

  • 【動物咬傷】口腔内常在菌感染の対応を

  • 高齢者のインフルワクチンと死亡減少

  • 2012年を麻疹排除の年に

  • インフルエンザ治療と麻黄湯


イモバックスポリオ
2012年4月27日、日本初となる不活化ポリオワクチン(商品名イモバックスポリオ皮下注)が製造承認を取得した。
適応は「急性灰白髄炎(ポリオ)の予防」であり、用法・用量は「1回0.5mLずつを3回以上、皮下注射」となっている。

小児麻痺とも称されるポリオは、ポリオウイルスの感染によって生じる疾患である。
ポリオウイルスは、口から体内に入って腸管内で増殖し、まれに重篤な麻痺を引き起こす。
感染すると、200人に1人の割合で不可逆性の麻痺が、主として下肢に現れる。
麻痺症状を呈した患者の5~10%は、呼吸に関与する筋肉が動かなくなり死亡する。

ポリオは5歳未満の小児が罹患することから、世界中で乳幼児を対象としたポリオワクチンの予防接種が実施されている。
日本においても、1961年より経口ポリオワクチンの接種が行われており、2000年にはWHO(世界保健機関)から、日本及び西太平洋地域における野生株によるポリオ根絶が宣言された。
しかし、海外の一部の地域ではいまだにポリオの根絶には至っていないことから、現在でも経口ポリオワクチンの定期接種が実施されているのが現状である。

しかし経口ポリオワクチンの接種では、極めてまれではあるが、生ポリオワクチンに由来する「ワクチン関連ポリオ麻痺」が、ワクチン接種者や接種者の周辺に発生することが報告されており、安全性が問題となっていた。
こうしたことから「厚生科学審議会 感染症分科会 感染症部会 ポリオ及び麻しんの予防接種に関する検討小委員会」は2003年、海外で既に使用されている不活化ワクチンの導入が必要であると提言していた。

今回、承認された不活化ポリオワクチンは、3種類のポリオウイルスの病原性を排除して感染力をなくした、単独不活化ワクチンである。
海外では、1982年にフランスで発売されて以降、現在まで86カ国で承認されており、ポリオ予防の標準的ワクチンと位置づけられている。

このポリオ不活性化ワクチンは今後、国が定める所定の手続きを経て、2012年9月1日より定期接種に導入される予定となっている。

本ワクチンは、承認時までの国内臨床試験で、ワクチンの初回接種(3回)後に出現した主な副反応として、特定注射部位反応では疼痛(8.1%)、紅斑(66.2%)、腫脹(37.8%)が、特定全身反応では37.5℃以上の発熱(14.9%)、傾眠状態(29.7%)、易刺激性(32.4%)などが認められている。
また重大な副反応としては、ショック・アナフィラキシー様症状、けいれんに関して注意が喚起されている。

出典 NM online 2012.5.25
版権 日経BP社

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日本小児科学会  水痘ワクチン,追加接種の推奨時期を「1歳6カ月~2歳」に早める
乳幼児ワクチンの接種スケジュールを作成している専門家団体が最近,相次いで水痘ワクチンの接種時期の変更を発表した。
5月21日,日本小児科学会が水痘ワクチンの2回目の接種時期を「18カ月以上2歳未満」に早めることなどを公式サイトで明らかにした。
国立感染症研究所および「NPO法人 VPDを知って,子どもを守ろうの会」(以下,VPDの会)も最近,水痘ワクチンの2回目の接種時期を「1歳3カ月~5歳」と変更することを発表している。

1回接種による有効率低いことが明らかに
日本小児科学会,感染研,VPDの会では,水痘ワクチンの1回目の接種を1歳以降から行うよう推奨している。
ただし,2回目の接種推奨時期は「5歳以上7歳未満」(日本小児科学会),「3~6歳」(VPDの会)とされていた。

日本小児科学会によると,
(1)日本の最近の研究で水痘ワクチンの1回接種での有効率が低いだけでなく,接種後1年程度で水痘罹患率が上昇することが明らかになってきた,
(2)1回接種かつ1年間水痘感染が認められなかった小児への2回接種で1回接種を大きく上回るブースター効果が確認された
—ことなどが明らかになってきたという。
これを受け「小児への水痘ワクチン接種が十分に行われておらず,水痘の流行が抑制されていないわが国の現状では,同様の状況にあったドイツのスケジュールを参考に2回目の接種時期を18カ月以上2歳未満(初回接種後4~12カ月後)に変更した」と述べている。

なお,同学会は,インフルエンザ菌b型(hib)ワクチンの4回目の推奨接種時期を「生後12カ月以降」に早めることも発表している。

接種率は約40%,疾病負担の実態あまり知られず
水痘ワクチンは予防接種法上の任意接種に位置付けられている。
「接種率は約40%と決して高くない」と薗部友良氏(VPDの会理事長)。
しかし,日本では毎年約100万例が罹患し,2,500例が入院,いまだに水痘そのものや合併症による死亡例も少なくないと推計。
こうした実態は医療関係者,保護者にあまり知られていないという。

現在,予防接種法改正が山場を迎えつつある。同ワクチンも定期接種化のレールに載せられてはいるが(関連記事),現時点で政府が考える同ワクチンの優先順位は高いとはいえないようだ。

一方,昨年,国立感染症研究所が厚生科学審議会予防接種部会のワーキンググループで水痘ワクチンに関するファクトシートを作成している。
そこでは同ワクチンの費用効果について「抗ウイルス薬による治療費は低廉とは言い難く,重症水痘による入院医療費は一般的感染症の中でも上位を占める」「直接的な医療費と予防接種費用の比較では,医療費がより安価。
ただし,政策決定に重要な,家族の看護に伴う機会費用を含めると予防接種費がより安価。
定期予防接種を推進することが社会的視点からは優れていることが明らかにされている」などの評価がまとめられている。 (坂口 恵)

出典  MT Pro 2012.5.22
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
水痘ワクチン初回接種後4週〜12カ月に2期接種を
出典  MT Pro 2012.4.26
■落合小児科医院(三重県)の落合仁院長は,ここ数年で2回の水痘流行を経験した保育園在籍児のワクチン効果を調査し,高い抗体反応を期待するには1回接種では不十分で,1歳代の初回接種後,4週〜12カ月の間に2期接種をすることが望ましいと東京都で開かれた第15回日本ワクチン学会で報告した。

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単純性虫垂炎への抗菌薬治療は有効で安全
虫垂切除術と比較した最新のメタ分析の結果
急性単純性虫垂炎に対する一次治療としての抗菌薬投与は、虫垂切除術と比べて合併症リスクは有意に低く、入院期間にも差はないことが、最新のメタ分析で明らかになった。
英Nottingham大学病院のKrishna K Varadhan氏らが、BMJ誌電子版に2012年4月5日に報告した。

急性虫垂炎患者のうち、複雑性虫垂炎(壊疽性/穿孔性/膿瘍形成性の虫垂炎)は全体の20%程度に留まる。
それ以外の単純性虫垂炎の患者には抗菌薬治療も選択肢になると考えられており、実際に適用されている。にもかかわらず、その有効性と安全性を支持する質の高いエビデンスはなかった。

そこで著者らは、近年行われた質の高い無作為化試験を対象に、急性単純性虫垂炎に対する一次治療としての抗菌薬投与と虫垂切除術について安全性と有効性を比較するメタ分析を行った。

分析対象としたのは、血液検査、超音波検査、CT検査などによって急性単純性虫垂炎と診断された成人患者を対象に、抗菌薬投与と虫垂切除術の転帰を比較していた無作為化試験とした。

主要評価指標は、各研究が共通して報告していた合併症に設定した。
具体的には、抗菌薬群については、「穿孔性/壊疽性虫垂炎または腹膜炎と、後に虫垂切除術を受けた患者の創感染」とし、虫垂切除術群については、「穿孔性虫垂炎または腹膜炎と創感染の発生件数」とした。
2次評価指標は、入院期間、再入院、複雑性虫垂炎(抗菌薬群では抗菌薬治療開始後、虫垂切除術群では手術時に同定されたケース)の罹患率などに設定した。

メタ分析では、診断時から抗菌薬が投与された患者を抗菌薬群とした。
Intention-to-treat分析を基本とし、抗菌薬投与を受けていたが改善せずその後虫垂切除術を受けた患者も抗菌薬群に含めた。

4件の無作為化試験が条件を満たした。合計900人の患者が登録されており、470人が抗菌薬、430人が虫垂切除術に割り付けられていた。
抗菌薬群に適用された薬剤は、「アモキシシリン+クラブラン酸を継続使用」が1件、「セフォタキシム+メトロニダゾール投与後、シプロフロキサシン+メトロニダゾールに切り替え」が1件、「セフォタキシム+チニダゾール投与後、オフロキサシン+チニダゾールに切り替え」が2件だった。


フリー、メッセージボード、サポートグループ、うつ病

抗菌薬群470人のうち、32人がプロトコル逸脱により脱落し、93人は医師の判断や患者の希望などを理由に、手術にクロスオーバーされた。残る345人は抗菌薬投与により治療成功と判定された(短期的治療成功者)。
そのうち80%に相当する277人は1年後まで症状なしに過ごしていた(長期的治療成功者)。
残る68人は再入院し、うち3人は抗菌薬再投与のみで再び治療成功と判断された。
65人は虫垂切除術を受けたが、4人は虫垂炎ではなく、48人は蜂窩織炎性虫垂炎、13人が複雑性虫垂炎(壊疽性4人、穿孔性9人)だった。

一方、虫垂切除術を受けた患者は、当初から割り付けられた患者420人に抗菌薬群からのクロスオーバー組93人を加えた513人だった。
手術の結果、21人が虫垂に異常がなく、20人が他の診断を受けた。
残る472人が虫垂炎と確認され、うち343人が蜂窩織炎性虫垂炎、129人が複雑性虫垂炎(壊疽性 51人、穿孔性78人)だった。術後の再発は0件だった。

主要評価指標である1年間の合併症の発生率は、切除群(430人中108人、25%)に比べ、抗菌薬群(470人中84人、18%)で有意に少なかった。
Mantel-Haenszel推定によるリスク比は0.69(95%信頼区間は0.54-0.89、不均質性を示すI2=0%、P=0.004)で、抗菌薬群において合併症の相対リスクは31%減少した。

当初の入院期間には差はなく(P=0.29)、複雑性虫垂炎の罹患リスクにも有意差はなかった(P=0.09)。

急性単純性虫垂炎患者に対する一次治療として、抗菌薬治療は有効で安全だった。
合併症リスクは切除群に比べ有意に低く、その後の複雑性虫垂炎罹患のリスクは、最初から手術に割り付けられたグループとの間に有意差を示さなかった。
「この結果は、抗菌薬治療は早期の患者に対する選択肢として検討するに値することを示している」と著者らは結論している。

原題
Safety and efficacy of antibiotics compared with appendicectomy for treatment of uncomplicated acute appendicitis: meta-analysis of randomised controlled trials
全文

出典  NM online 2012.4.17
版権 日経BP社

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抗菌薬は「time honoredな薬剤」を優先,神戸大・岩田氏が提言
第84回日本感染症学会より

抗菌薬の乱用は国際的な問題となっているが,近年はその適正使用に対する意識も徐々に浸透している。
では,抗菌薬の適正な選択方法とは何か。
神戸大学病院(感染症内科)教授の岩田健太郎氏は第84回日本感染症学会(4月5~6日,京都府)の教育講演で,抗菌薬に対する最新の考え方および使用方法などを紹介。その抗菌薬を使用する必然性を見出すことが重要とした。
また,代替薬の多い場合には「時間の批判に耐えた(time honored)抗菌薬」を優先して選択するよう推奨している。

代替薬多い場合は絞り込みが有効
岩田氏はまず,抗菌薬使用の前提は臨床診断にあるとし,いくつかの症例を提示。
そこから,
(1)思いつきや思い込みによる診断に注意,
(2)前医の診断が正しいとは限らない,
(3)臨床症状から「おかしい」と思う感覚を大切にする,
(4)病理診断は重要だが実施できない場合もある,
(5)経過が長い感染症は広域型抗菌薬より狭域型抗菌薬を優先
―などのポイントを挙げた。
(5)については,同氏は「最初から広域型を使用すると,その後も広域型を使用し続けなければならなくなる。抗菌薬投与を始める際には終わり方も考慮すべき」と述べている。

広域型抗菌薬の使用量を減らすには,医療機関内の感染制御部や薬剤部などによる妥当性の吟味が不可欠。そのためには,代替薬が多い場合は薬剤を絞り込んでチェック量を減らすことが重要だ。
同氏の施設ではカルバペネム系薬は1種類(メロペネムのみ。一部例外的にパニペネム・ベタミプロン),経口用第三世代セフェム系薬も1種類に絞り込んだという。
なお,同施設の感染制御部,薬剤部などによるチェックは,各診療科での使用は縛らずに後追いで吟味し,使用が妥当でなかった場合のみ介入する手法を取っている。

新しい薬剤は副作用情報の集積が不十分
また,抗菌薬治療においては,どの薬剤をどの場面で使用し,どの場面では使用しないかという各薬剤の位置付けも重視される。
薬剤の効果と副作用のバランスなどを勘案し,その薬剤でなければならない必然性を認識するということだが,その把握には感受性や薬物動態・薬理学(PK/PD)だけでは情報が不十分で,他の抗菌薬との関係性から模索する必要があるという。

例えば,教科書には黄色ブドウ球菌に対してイミペネム・シラスタチンやパニペネム・ベタミプロン,緑膿菌に対してメロペネム,ドリペネムがよりよいとされている。
しかし,岩田氏は「イミペネム・シラスタチン,ドリペネム,メロペネムはいずれも大きな差がなく,多くの状況で代替が可能」であることを紹介。
同氏の施設では,前述のようにカルバペネム系薬を絞り込んでいる。
また,カルバペネム系薬内のサイクリング(例えば,メロペネムが無効だった症例にパニペネム・ベタミプロン,さらにドリペネムを使用する)は避けるべきと主張した。

同氏は「新しい薬剤こそよい薬剤だと思いがちだが,新しい薬剤は副作用情報が集積されていない。しかし,例えばペニシリンGは現在知られている以上の副作用は,製造上のミスがない限り考えられないだろう」とし,同じ効果を持つ薬剤であれば時代,経験,批判をすべて乗り越えてきたtime honoredな抗菌薬を重視するよう提言した。
そのうえで,グラム陽性菌をターゲットとしてカルバペネム系薬を用いる必然性はほとんどなく,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)や腸球菌へ特化した使用は避けたほうがよいとしている。

ガイドラインや慣例に流されず根拠を明確に
岩田氏は,広範囲ペニシリン系薬のピペラシリンを予防的抗菌薬として使用することが慣例となっていることも問題として提起した。
これはガイドラインなどにも記載されていることだが,同氏は「ブドウ球菌に効果がなくて緑膿菌に効果があるものを術中抗菌薬に使う必然性はない」と説明。
記載されているガイドラインの質を吟味し,慣例に流されず根拠を持って実施するよう求めた。
なお同氏は,ガイドラインの記載内容を吟味した「感染症診療ガイドライン総まとめ」(総合医学社刊)を出版している。

キノロン系薬についても,同氏は第一世代のキノロンや海外で使用制限が推奨されている薬剤,効果と副作用のバランスが取れていない薬剤,発売直後の薬剤などを除外。
レボフロキサシン,シプロフロキサシン(経口剤,注射剤ともに),パズフロキサシンのみに絞ることが可能とした。副作用について,同氏は「抗菌薬に副作用は付きものだが,より安全な代替薬がある場合はその薬剤を使用する必然性はなくなる」と付け加えている。

マクロライド系薬については,鼻水,鼻づまり,上気道炎,急性咽頭炎,急性副鼻腔炎,急性中耳炎,急性気管支炎,慢性の咳のマネジメントに対し,マクロライド系薬である必要がないことに言及。
異型肺炎,急性期の百日咳,性感染症の一部,Helicobacter Pyloriの除菌など特殊な状況以外は,マクロライド系薬でなければならないわけではないとした。

同氏は「これまで抗菌薬は,効くか否か,治るか否か,耐性か否かなどで語られることが多かった。しかし,それぞれの薬剤に適した菌や効果,副作用,他の薬剤との関係を考慮し,その薬剤を使用する必然性を見出すことが重要」と結論。
こうした努力を怠らなければ,A群溶血性連鎖球菌のマクロライド系薬耐性を1990年の44%から6年後には8.6%まで減少させたフィンランドのように,耐性菌を減らすことが可能かもしれないとしている。(小島 領平)

出典 Medical Tribune 2010.4.9
版権 メディカル・トリビューン社


インフル出席停止、「解熱後2日を経過かつ治療開始後4日を経過」が妥当
インフルエンザにおける出席停止期間を見直した「学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令」が、4月1日からの施行となった。
しかし、長年にわたり学校医として、またインフルエンザ診療の専門家として学校保健に携わってきた廣津医院(川崎市)院長の廣津伸夫氏は、これまでの議論とその結論に違和感を覚えるという。

―― 結局、インフルエンザの出席停止期間の基準は、これまの「解熱した後2日を経過するまで」に、新たに「発症したあと5日を経過」が加わりました。
さらに、「保育所における感染症対策ガイドライン」を倣うかたちで、幼稚園に通う幼児の場合は「解熱した後3日を経過するまで」と改訂されました
表1)。

表1 インフルエンザにおける出席停止期間
・改訂前:解熱した後2日を経過するまで
・改訂後:発症したあと5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで(ただし、保育所や幼稚園に通う幼児は「解熱した後3日を経過するまで」)

廣津
 「インフルエンザの出席停止期間の見直し」に関しては、2002/03年シーズンから2010/11年までに行った「インフルエンザウイルスの検出期間の検討」の結果をもとに意見をパブリックコメントに提出しました。

―― 詳しくご説明ください。
廣津 
私は、家族内感染の防御のためにウイルスがいつまで検出されるかの検討を続けています。
0歳から6歳の乳幼児と7歳から15歳の小中学生(以下、生徒)では、明らかにウイルスの検出期間は異なりますので、年齢により出席停止期間を考慮することに関しては同意しています。
両者におけるウイルス検出期間の違いは、年齢の違いからくる治療効果の差によるものであって、乳幼児は一般に治療効果は低く、その結果ウイルス検出は治療後でも、より長引きます。


重大な病気の患者の急性の痛みのサービス

治療の効果にしたがって発症後のウイルス検出が影響を受けますので、当然、乳幼児はより長くウイルスを排出します。
ましてや、無治療の患者ではウイルスがさらに長く排出し続けます。

一方、解熱後の検出は、熱の経緯がウイルスの消長を反映することから、年齢の差、治療の差には大きく影響されないのです。
したがいまして、「出席停止期間を発症後の日数により規定すること」および「解熱後の出席停止期間を年齢により規定すること」に対しては、異った意見を持っています。

―― なぜ「発症後の日数」ではだめなんでしょうか。
廣津 
いつ発症したのか問われて、しっかりと答えられる保護者は、どれだけいるでしょうか。
「昨日の夜中、いや昨日の昼ごろから、ひょっとしたら一昨日の夜かも」などと、発症日の起点は不確かになりがちです。あやふやになりがちな発症日を起点にするのは、やはり危険だと思います。

―― 解熱後の出席停止期間の基準に「年齢」を持ち込むこともだめなんでしょうか。
廣津 
まず、私が行った研究の結果を見ていただきたいと思います。

H3N2、H1N1(2008/09年のタミフル耐性を含むが、H1N1pdm2009は含まない)のA型500例、およびB型370例のうち、0歳から6歳の乳幼児と7歳から15歳の小中学生、および無治療者(A型26名、B型14例)を対象に、ウイルス検出の推移を調べました。
なお、以下は、発症した後5日を経過した後の登校は、発症6日後、すなわち第7病日と理解して考察しました。

―― 縦軸は、ウイルスが検出された患者さんの割合ですね。
廣津 
そうです。
ご覧のように、治療開始5日後(治療を開始した後4日を経過した後)にウイルスが検出される割合(以下、残存率)は、A型の場合、乳幼児19.8%、生徒4.9%でした。
図には示しませんでしたが、B型ではそれぞれ19.6%、2.1%となります。
また、治療開始6日後の残存率はA型の場合、乳幼児6.8%、生徒1.0%、B型ではそれぞれ、2.3%、0.7%となります。
この結果から、A型およびB型ともに治療開始5日後における生徒でのウイルス残存率は、治療開始6日後における乳幼児のウイルス残存率と近似していることがうかがえます。

―― 生徒では治療開始後5日(治療を開始した後4日を経過した後)、乳幼児では6日(治療を開始した後5日を経過した後)が、それぞれ1つの目安となりうるわけですね。
廣津 
次は、発症後いつまでウイルスを検出するかということです。
発症6日後のウイルス残存率は、インフルエンザA型の場合、乳幼児15.3%、生徒3.1%、無治療者30.0%となっています。
これでは、一律に「発症後5日を経過した後はウイルスがほとんど検出できない」とは言えないと思います。

―― 無治療者の30.0%という結果は、驚きの数字です。
廣津 
無治療者を含めて、発症後の日数を基準にして出席停止期間を定めることには反対です。
なお、B型ではそれぞれ14.6%、0.8%、12.5%となりました。
また、発症7日後の残存率は、A型でそれぞれ2.4%、0.0%、7.7%となり、B型ではそれぞれ2.3%、0.7%、9.1%となっています。

このような年齢の差および治療の有無によるウイルス残存率の違いに加え、ウイルスが発症後いつまで検出されるかは、治療開始時期に大きく影響されますので、今回、「発症したあと5日を経過」を加えたことには疑問が残ります。

―― 「発症したあと5日を経過」を新たに追加する根拠が揺らいでいるということですか。ではこれまでの基準だった「解熱した後2日を経過するまで」には、根拠となるデータはあるのでしょうか。
廣津 
「解熱後いつまでウイルスを検出するか」ですが、たとえば解熱3日後のウイルス残存率は、A型では乳幼児31.5%、生徒17.3%、無治療28.6%、B型では乳幼児20.5%、生徒5.7%、(無治療は症例が少ないため不明)となりました。
解熱4日後の残存率は、A型ではそれぞれ、12.9%、4.2%、16.7%、B型ではそれぞれ4.8%、0.8%(無治療は無)でした。

つまり、解熱後、無熱状態を2日間家庭で過ごした後の登校までには、解熱後3日近く経過している場合が多いですから、ウイルス残存率は3日後を参照することで充分と思われます。
また実際に、3年間にわたり延べ7小学校を調査した結果では、2日間の出席停止期間を守った児童からの感染は起きていないことを認めています。

―― 保育園や幼稚園に通う幼児の場合は「解熱した後3日を経過するまで」と、1日長く設定されました。
廣津 
「年齢によるウイルス残存率の違いについて」ですが、乳幼児と生徒のウイルス残存率の差をそれぞれのグラフで見てみますと、「発症後」や「治療開始後」より、「解熱後」の方が小さいことが分かります。

なお、詳細は、乳幼児と生徒のウイルス残存率の差(ポイント)は、発症後4日、5日、6日、7日で、A型の場合それぞれ20.6、24.0、12.2、2.4、B型では37.0、36.9、13.8、1.6でした。

治療開始後3日、4日、5日、6日で、A型では24.1、26.9、14.9、5.8、B型では23.2、29.0、17.5、1.6でした。

一方、解熱後1日、2日、3日、4日で、A型では-7.7、9.5、14.2、8.8、B型では4.6、19.2、14.8、4.0となっています。

解熱後のデータは、解熱とウイルス残存率は比較的相関していることを示しています。
これはとりもなおさず、「ウイルスが少なくなることにより解熱していく」ことを意味し、熱の経過はウイルス量を反映していると思われます。
また、乳幼児と生徒のウイルス残存率の差は、「解熱後」が小さいわけですから、解熱後の出席停止期間を年齢によって変えることには違和感を覚えます。

―― 解熱後のウイルス残存率は、乳幼児、生徒、成人、無治療とも似たようなカーブをたどっています。解熱後4日では、すべての群で20%を切っています。
廣津 
繰り返しになりますが、「解熱後の出席停止期間」を年齢によって変える必要性は低いということです。
むしろ、図1で見たように、「治療開始後のウイルス残存率」には年齢差がありましたから、治療開始後の日数を基準とする場合は、年齢の違いで変える意義があります。

―― 治療開始5日後における生徒でのウイルス残存率は、治療開始6日後における乳幼児のウイルス残存率と近似していました。
廣津 
私は、出席停止期間を見直すのであれば、これまでの基準に、治療開始後の日数を加えるべきだと考えています。
発症からの日数では、さきほどお話したように、「発症の起点」が不明確になりがちです。
また、年齢あるいは治療の有無で、同じ発症後の日数でもウイルス残存率に差があります。
それよりは、医療機関を受診し、インフルエンザの治療を開始した日を起点とする方が明確で分かりやすいはずです。

以上の検討から、出席停止の期間の基準としては、「インフルエンザにあっては、解熱した後2日を経過し、かつ、治療を開始した後4日(幼児にあっては5日)を経過するまで」を提唱したいと思います。

出典 NM online 2012.4.6
版権 日経BP社


ロタテック:5価の経口弱毒生ロタウイルスワクチン
2012年1月18日、経口弱毒生ロタウイルスワクチン(商品名ロタテック内用液)が製造承認を取得した。
適応は「ロタウイルスによる胃腸炎の予防」であり、用法・用量は「乳児に通常、4週間以上の間隔をおいて3回接種し、接種量は毎回2mL」となっている。
本薬は、2011年7月に承認されたロタリックスに次いで2番目となるロタウイルスワクチンである。

ロタウイルスは、世界中で乳幼児の急性重症胃腸炎の主な原因となっている。
衛生状態のよい先進国においても、5歳未満の乳児下痢症の原因の多くはロタウイルスだとされている。
日本では、6歳未満の小児のうち年間約80万人(100人年あたり11人)がロタウイルス胃腸炎で外来を受診し、5歳未満の7800人(最大15人に1人)が入院している。
その年齢分布のピークは、生後12カ月から24カ月未満といわれている。

日本でのロタウイルス胃腸炎は、毎年冬から春にかけて流行が認められるが、ウイルスの感染力が強いことから手洗いや消毒では完全に予防はできない。
生後3カ月までは母親からの免疫によって感染を起こしにくく、感染しても症状は軽いが、生後3カ月以降に初めて感染すると重症化しやすい。
このことからWHO(世界保健機関)は、重症化予防には早期のワクチン接種が有効であるとして、定期接種化を推奨している。

今回、承認されたロタテックは、先行して発売されているロタリックスが単価の弱毒生ロタウイルス株からなる単価ワクチンであるのに対し、ロタウイルス胃腸炎発症原因の約90%を占める5つの異なる株を含んだ5価ワクチンである。
一般にロタウイルス胃腸炎は、異なる株のロタウイルスに繰り返し感染するため、多価ワクチンであることは有用である。
国内外の臨床試験では、重度のロタウイルス胃腸炎に対する高い予防効果、入院及び救急外来受診数の抑制効果、安全性が確認されている。
2006年に米国で承認されて以降、2011年12月現在、ロタテックは世界100カ国以上の国と地域で承認されている。

ただしロタテックは、ロタリックスと同様に、保険が適用できない。
また、承認時までの国内臨床試験では、本薬接種後14日間で14.5%に副反応が認められているので注意したい。
主な副作用としては、下痢(5.5%)、嘔吐(4.2%)、胃腸炎(3.4%)、発熱(1.4%)が報告されている。

出典 NM online 2012.2.2
版権 日経BP社

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バハ·カリフォルニアのビーチ予防熱

【動物咬傷】犬咬傷はまず狂犬病検査 ⇒ ×
× 犬咬傷はまず狂犬病検査   ○ 口腔内常在菌感染の対応を
空前のペットブームの中、環境省の調べでは国内の犬咬傷事故数は年間約6000件起きている。
しかし、これは都道府県が定める条例(東京都の場合は「東京都動物愛護及び管理に関する条例」)に基づき、危害を加えた犬の飼い主が届け出た数を集計したものにすぎない。
法律による届け出義務はないので、犬咬傷事故は実際にはこれを相当数上回るとされる。

犬にかまれた際に最初に頭に浮かぶのが狂犬病ではないだろうか。
狂犬病は、現在でも有効な治療法はなく、全世界で毎年約5万人が死亡している。

しかし、「日本で犬にかまれても、狂犬病は基本的に心配ない。逆に注意が必要なのが口腔内常在菌による感染症」と語るのは、神戸市立医療センター中央市民病院救命救急センター救急部長の有吉孝一氏。
実は日本では1957年以降、海外で感染して帰国後に発症した3人を除いて狂犬病の発症例はなく、世界でも数少ない狂犬病清浄国といわれている。
特に狂犬病ワクチン接種が義務化されているペット犬からの感染はまず考えられない。

その一方で近年、報告患者数が増加しているのが、犬・猫の口腔内常在菌Capnocytophage canimorsusで起こるカプノサイトファーガ症だ(症例1、表1)。
同感染症は、76年に初めて敗血症、髄膜炎例が報告された比較的新しい疾患。
国立感染症研究所獣医科学部主任研究官の鈴木道雄氏は、「培養が比較的難しい菌なので、以前は原因不明とされていたのだろう」と話す。

症例1
カプノサイトファーガ症の1例(神戸市立医療センター中央市民病院 伊原崇晃氏による)
71歳、男性。C型肝炎の既往あり。
2008年7月中旬に、飼い猫に右手をかまれ受傷するも放置していた。
6日後より腹痛が出現。他院にて便秘と診断されるが腹痛が持続し、当院救急外来を受診。ショック状態で急性腹症が疑われ緊急手術となったが病変は見当たらなかった。
血液培養から糸状のグラム陰性桿菌が確認されたため、メロペネム1gを投与し加療。
この桿菌は後に、Capnocytophage canimorsusと判明した。
不安定な状態が続いたが、意識障害・多臓器不全・DICの加療の後、約3カ月後に軽快退院となった。


表1 国内におけるカプノサイトファーガ症の報告例(鈴木氏による)
その後、2010年に5人(うち死亡1人)、11年には7人(1人)が報告されている。※同症例のみ報告年

 犬・猫の口腔内常在菌による感染症として最も知られているのはパスツレラ症だろう。犬咬傷の約半分でパスツレラ属菌が分離される。
ただし、パスツレラ症では死亡例がほとんど報告されていない。
その一方で、カプノサイトファーガ症は、発症率そのものは非常に低いと考えられているものの、敗血症や心内膜炎を発症した場合の死亡率は約30%と高い。

カプノサイトファーガ症は、咬傷だけでなく掻傷でも発症し、傷口が小さくても全身症状を呈することがある。
死亡・重症化例は、高齢者や糖尿病、肝炎、アルコール依存症、脾摘後など、何らかの基礎疾患を有し、免疫能が低下している場合が多い。
鈴木氏は、「宿主側の要因が発症に大きく影響しているようだ」と語る。
ただし、どのようなメカニズムにより、敗血症や播種性血管内凝固症候群(DIC)を生じるかは、まだよく分かっていないのが現状だ。

 「われわれの調査では、犬の8割弱、猫の6割弱がC.canimorsusを口腔内常在菌としていることが明らかになっている」と鈴木氏。
すなわち、ペットの犬・猫の大半が同菌を保有していると考えた方がよさそうだ。
今後、同感染症が知られることで、報告例も増える可能性がある。

予防的抗菌薬投与も考慮
このような状況から、犬・猫咬傷に対する応急処置では、カプノサイトファーガ症やパスツレラ症などの原因となる口腔内常在菌の複合感染を念頭に処置する必要がある。

有吉氏は、高圧洗浄で創部をきれいにした上で、基本的に縫合せず、軟膏や生食ガーゼなどで覆うとよいという。
開放創とするのは感染予防効果があるためだ。
また、イソジンやオキシドールのような消毒薬は、傷の治りを遅くするので創傷内部に使うべきではない。
「目に入れてはいけない薬物は傷の内部にも入れないのが基本」と、有吉氏は強調する。

亀田総合病院(千葉県鴨川市)総合診療・感染症科部長の細川直登氏は、「明らかな傷が認められる場合は予防的抗菌薬投与を勧めたい」という。
特に、深い貫通性の創、中程度の挫滅創、静脈やリンパ管叢のある部位における傷、手の傷、骨や感染に近接した傷(特に手関節や人工関節の近く)、外科的修復が必要な創、免疫不全者の場合には、経口抗菌薬の予防投与が海外で推奨されているという。

抗菌薬としては、アモキシシリン/クラブラン酸(AMPC/CVA)の3~5日間投与が勧められている。
「海外ではAMPC875mg/CVA125mg合剤の1日2回投与が一般的だが、国内には同じ合剤がないので、AMPC250mg/CVA125mg合剤に、AMPC250mgを加えて、1日3回同時服用するよう処方するといいだろう」と、細川氏は話す。

× 蛇にかまれたら切開・吸引   ○ 安静に、腫れたら血清投与
 「マムシなどの有毒蛇にかまれた際、毒が全身に回らないようにかまれた部位の上部を縛り、毒を切開したり吸い出したりするという手技があったが、これらは全部根拠のないこと」と言うのは、北里大救命救急センター病棟主任の上條吉人氏。

国内で問題となり得る有毒蛇は、マムシ、ヤマカガシ、ハブだ。

上條氏は、縛ることで血行が悪くなり、切開で感染リスクも高まると指摘する。
マムシの毒は深くかまれない限り体内には入らず、無毒咬傷が少なくない。
切開・吸引により、逆に傷を悪化させることになりかねない。
マムシ咬傷への対処法としては、「腫れがひどく内圧が上昇して循環障害を来すコンパートメント症候群以外では、切開は不要」という。

有吉氏も、「咬傷部位に歯が残るともいわれていたが、これも迷信。切開・吸引は不要」と言う。

マムシにかまれ、咬傷部位が腫れてきた場合には、マムシに対する抗毒素(ウマ免疫グロブリン)を投与する。基本的に、手をかまれた場合は肘以上、足をかまれた場合は膝以上まで腫れた際に抗毒素を投与することが勧められている。

有吉氏は、「抗毒素を用いると腫れが早く引き、入院期間の短縮につながる」と話す。
咬傷部位が少しでも腫れている患者では、抗毒素を早めに検討しているという。

ただし、ハブの抗毒素は沖縄県以外では入手が困難で、ヤマカガシの抗毒素も日本蛇族学術研究所(群馬県太田市tel:0277-78-5193)以外は常備していない。

出典 NM online 2012.2.17

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高齢者のインフルワクチン,バイアス除くと死亡減少認められず
カナダ1,300万人-シーズンを操作変数法で分析

 カナダInstitute for Clinical Evaluative SciencesのKenny Wong氏らは,オンタリオ州の公的データベースを用い,65歳以上住民におけるインフルエンザワクチンの有効性について約1,300万人-シーズンを対象に研究。
セレクションバイアスを除去するため操作変数法を用いて分析したところ,全死亡の減少は認められなかったと発表した(Arch Intern Med 2012年2月27日オンライン版)。

インフルエンザ・肺炎入院と全死亡の複合アウトカムはやや改善
Wong氏らは,インフルエンザシーズン9期分(2000-01年~2008-09年)1,262万1,806人-シーズンを対象に1次評価項目としてインフルエンザワクチン接種と全死亡の関連を調べた。
2次評価項目は,肺炎・インフルエンザ入院または全死亡の複合アウトカムとした。
人口統計,合併症,ヘルスケアサービスの利用,処方薬の利用,特定の医療処置などを調整因子とし,ロジスティック回帰法と操作変数法を用いて分析した。

操作変数法とは,観察研究において隠れたバイアスの影響を除去するために用いられる計量経済学の手法で,操作変数は治療に深くかかわるが,アウトカムには独立して影響しない。
同研究では,調査小区分特異的なワクチン接種率を操作変数とした。

ワクチン接種群を非接種群と比べた,インフルエンザ流行期と流行後における全死亡の調整後オッズ比は,ロジスティック回帰分析ではそれぞれ0.67(95%CI 0.62~0.72),0.85(同0.83~0.86)と有意に低下したが,インフルエンザの流行がない状態ではワクチンの効果がないはずであるなど,バイアスの存在が示唆された。

一方,操作変数法を用いて分析したところ,全死亡の調整後オッズ比はインフルエンザ流行期で0.94(同0.84~1.03)でワクチン接種による有意なリスク低下はなかった。
流行後の調整後オッズ比は1.13(同1.07~1.19)とむしろ上昇していた。

肺炎とインフルエンザによる入院または全死亡の調整後オッズ比は,ロジスティック回帰法では流行期と流行後でそれぞれ0.74(同0.70~0.78),0.88(同0.87~0.90)で,いずれも有意だった。
操作変数法で分析すると,流行期は0.86(同0.79~0.92)とリスク低下を示したが,流行後は1.02(0.97~1.06)となった。


よりバイアスの少ない分析によるとワクチン接種による全死亡の減少効果はなく,複合アウトカムがやや改善したのみであったが,同氏らは「たとえ効果が小さくても予防接種は一般的に安全で,低コストであることから,決定的なエビデンスが蓄積されるまで高齢者に毎年の接種を推奨する現行のガイドラインは変更すべきでない」とする。
ただし,有効性の評価が改善されれば,個人や集団におけるより良い意思決定や有効なインフルエンザ対策の開発が促進されると見ている。   (木下 愛美)

出典 MT pro  2012.2.29
版権 メディカル・トリビューン社



接種率95%以上が不可欠
 世界保健機関(WHO)は2012年を,日本を含むアジア西太平洋地域における麻疹排除の目標年と設定しており,2012年度までに国内から排除し,その状態を維持することを目標に,現在はさまざまな対策が実施されている。

報告患者数は大幅に減少
日本では1978年から麻疹ワクチンを小児の定期予防接種に導入した結果,麻疹患者数は着実に減少してきた。
しかし,予防接種率が不十分であったため,毎年春から初夏にかけての流行は持続した。
特に,2001年は推計約28.6万人の患者が発生し,既に麻疹を排除した国々から麻疹輸出国と非難された。2007年には10~20歳代を中心に流行し,大学や高校で休校が相次ぐなど社会問題にもなった。
この事態を受け,2012年度までに国内から麻疹を排除して,その状態を維持することを目標とした「麻しんに関する特定感染症予防指針」が2007年12月に告示された。

予防指針では,日本独自の排除目標は定められていないが,WHOは全数報告などの優れたサーベイランス実施を前提に,
(1)輸入例を除き,麻疹確定例が1年間に人口100万人当たり1例未満(日本の人口に当てはめると年間120人未満)
(2)すべての年齢コホートで抗体保有率が95%(そのためには2回の予防接種率がそれぞれ95%以上が必要)
(3)輸入例に続く集団発生が小規模であること
—を麻疹排除状態の維持に必要なこととして提唱し,対策を強化している。

予防指針に基づき,全数報告疾患となり,迅速な対策に資するために,麻疹を診断した医師は可能な限り24時間以内に保健所に報告し,届け出後でも検査研究機関での検査結果を追加で報告することとなった。

また,高校や大学などで感染が拡大したことを受け,2008年度から5年間の時限措置として,中学1年生(第3期)と高校3年生(第4期)に相当する年齢の者を定期接種の対象に加え,2回接種世代は1990年4月2日以降に出生した者に拡大された。

ワクチン接種率は,第1期(1歳児)では2010年度95.7%と目標の95%以上を達成した。
ただし,第2期(小学校入学前1年間),第3期,第4期の接種率は年々増加するものの,2010年度は第2期92.2%,第3期87.3%,第4期78.9%と,いまだに目標を達成していない。

予防指針では,母子保健法・学校保健法(現・学校保健安全法)に規定されている健康診査(健康診断)や就学時健診の機会を利用して,必要回数の予防接種を受けていない者への接種勧奨が記載されている。
また,ワクチン接種を受けやすくするため,保護者同伴要件が緩和された(中学1年生,高校3年生相当年齢への接種では,書面で保護者の了承を得て,予診票に保護者の署名を得ることができれば,本人のみの受診でも接種可能)。

さらに,個別接種を原則としつつも,応急治療措置,緊急搬送措置など安全面で遵守すべき事項が満たされれば,学校医などとの連携の下に,中学校および高校などで定期接種として実施することも可能となった。
また,予防接種法には基づいていないが,医療機関受診時に予防接種歴・罹患歴を確認し,必要回数の予防接種を受けていない者への接種推奨も記載されている。

2008年は1万1,012人の麻疹発生が報告された。報告患者の麻疹含有ワクチン接種歴は,接種歴なし44.6%,1回接種26.6%,2回接種1.2%,接種歴不明27.6%で,年齢が高くなるほど接種歴不明の割合が多かった。
報告数が多かった自治体では積極的な対策が講じられ,例年5月の終わりから6月に見られる流行のピークは認められず,対策の効果が現れたと考えられた。

2009年以降,報告数は激減し,2009年度732人(前年度比93%減),2010年度455人(同39%減)で,2008年度と比べて96%の減少となった。

臨床診断したら直ちに保健所へ検体を提出
麻疹は全数報告疾患であり,
(1)検査診断例:届け出に必要な臨床症状(麻疹に特徴的な発熱,発疹,咳嗽・鼻汁・結膜充血などのカタル症状)の3つすべてを満たし,かつ病原体診断が陽性
(2)臨床診断例:届け出に必要な臨床症状の3つすべてを満たす
(3)修飾麻疹(検査診断例):届け出に必要な臨床症状を1つ以上満たし,かつ病原体診断が陽性
—は7日以内に報告することが義務付けられている。
国際的には検査診断例を80%以上に向上させることが求められているが,2010年度の麻疹報告例のうち28.3%は臨床診断例であった。

病原体検査では,分離・同定による病原体の検出,抗体の検出のいずれかが行われるが,2010年度の検査診断例のほとんどは麻疹IgM抗体価陽性のみによってなされていた。
しかし,2010~11年には伝染性紅斑が地域流行し,伝染性紅斑の急性期に麻疹IgM抗体価が弱陽性になることが判明した。
また,ヒトヘルペスウイルス(HHV)-6/HHV-7による突発性発疹やデング熱の急性期でも麻疹IgM抗体価が弱陽性を示すことも明らかとなった。

一方,発疹出現早期(3日以内)の麻疹IgM抗体検査で陽性であってもその後,陰性になることが判明した。
そこで,2010年11月に厚生労働省健康局結核感染症課長から,麻疹と診断した場合は全例,ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法などによる麻疹ウイルスの直接検出による検査診断を実施するよう通知が出された。

同研究所麻疹対策技術支援チームが作成した「最新の知見に基づく麻疹の検査診断の考え方」では,臨床診断した時点で24時間以内をめどに保健所に麻疹発生届を提出するとともに,麻疹IgM抗体価陽性の結果を待たず,できるだけ早く血液(EDTA血),咽頭ぬぐい液,尿の3点セットを保健所を通じて地方衛生研究所に搬送することが推奨されている(自治体により取り扱う検体が異なるので保健所に確認する)。

なお,検体の採取時期が遅いと,PCR検査やウイルス分離などの方法では陽性にならない場合があるため,発疹出� �後7日以内の提出を求めている。
また,発疹出現後4~28日には麻疹特異的IgM抗体検査(酵素免疫測定法;EIA)も並行して実施し,その抗体価を保健所に通知することが推奨されている(可能であれば,急性期と回復期のペア血清による抗体検査を実施)。

麻疹輸出国から輸入国へ転じる
2011年は,4月中旬に麻疹の報告が急増したものの,第28週以降は週10人以下の状況が続いている(2011年12月7日現在の麻疹報告患者数は421人)。
これについて,多屋室長は「『1人出たらすぐ対応!』との呼びかけが浸透し,成果が現れているのではないか」と言う。

最近報告された麻疹患者から分離・同定された麻疹ウイルスの遺伝子型を見ると,2007~08年に国内で大流行した遺伝子型であるD5型は2011年には検出されていない。
一方,2010年末から2011年初めは,主にアジアで流行中のD9型が目立ち(フィリピンからの輸入例が多い),2011年中旬の流行では主に欧州で流行中のD4型が多く検出された(フランスからの輸入例が多い)。
推定感染地域別に見ると,2011年第48週までの麻疹報告例421例中29例は国外で感染したことが推定され,国外感染例からの感染拡大が2011年の国内流行の特徴と考えられる。

2011年春はアジア・アフリカだけでなく,欧州諸国,オセアニアでも麻疹が大流行した。
その海外株が国内に伝播して流行したと考えられる。ワクチン接種率の向上,患者が1人発生した時点での迅速な対応,質の高いサーベイランスの強化により,麻疹輸出国と非難されていた日本は2011年には輸入国に転じたのではないかと指摘する専門家もいる。
なお,欧州諸国では麻疹ワクチンの2回接種が実施されているが,接種率は必ずしも高くなく,2回接種制度が存在しても,接種率が低ければ流行をコントロールできないことが示唆される。

今後の対策としては、海外からの輸入ウイルスによる感染伝播を防ぐことが求められており,「1人出たらすぐ対応!」と「検査診断の徹底」をいっそう強化する必要がある。
また,麻疹風疹混合ワクチンの接種率95%以上が排除達成に不可欠」である。

出典  MT Pro 2012.1.5(一部改変)
版権  メディカルトリビューン社


麻黄湯がインフルエンザ治療の新たな選択肢に
インフルエンザに保険適用のある麻黄湯。
タミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬とは異なり、抗ウイルス作用に加えて宿主側の免疫応答を調整することでも効果を発揮するという。
順天堂大学医学部総合診療科准教授の内藤俊夫氏らは、ランダム化比較試験で麻黄湯はタミフルなどと同等の効果があるとの成績を得ている。

■現在、インフルエンザ(流感)の保険適応があるのは、麻黄湯、柴胡桂枝湯、竹茹湯胆湯の3つがある。


漢方薬のかぜ症候群に対する作用

■麻黄湯の成分である桂皮には、ウイルス感染に対して濃度依存性に抑制効果を示すことが報告されている(Marsh M; Cell. 2006 Feb 24;124(4):729-40)。
麻黄湯の成分のうち、桂皮と麻黄にはサイトカインの産生抑制の効果が確認されている。
杏仁と甘草には免疫賦活作用があることが報告されている。

■麻黄湯単独群が9人、麻黄湯+タミフル併用群が9人、タミフル単独群が13人、リレンザ単独群が6人。
この4群で結果を比較したところ、以下の結果となった。
(1)麻黄湯のインフルエンザ感染後の解熱作用は、抗ウイルス薬と同等だった。
(2)麻黄湯は、インフルエンザ感染後の頭痛、筋肉痛、咳、倦怠感の自覚症状において、抗ウイルス薬と同等の効果が認められた。
(3)関節痛に関しては、タミフル単独群よりも有意な改善効果が認められた。

出典 NM online 2012.2.23
版権 日経BP社

インフルエンザと麻黄湯



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